視覚障がい者に関する福祉サービスについて



目次


(1)視覚障がい者の福祉サービスにはどのようなものがあるの?
(2)視覚障がい者を対象とした主な福祉サービス
(2の1)同行援護サービス
(2の1の1)同行援護サービスの利用対象者は?
(2の1の2)「どのようなことに利用できるの?」
(2の1の3)目的によっては利用できない場合があります
(2の1の4)同行援護サービス利用までの流れ
(2の2)福祉有償運送サービス
(2の2の1)福祉有償運送サービスの利用対象者は?
(2の2の2)何故同行援護サービスと福祉有償運送サービスが一緒に利用できるの?
(2の2の3)利用上の主なルール
(2の3)家事援助サービス
(2の3の1)家事援助サービスの利用対象者は?
(2の3の2)家事援助サービスの内容
(2の3の3)家事援助サービスを利用するまでの流れ
(2の4)日常生活用具給付事業
(2の4の1)日常生活用具給付事業の対象者は?
(2の4の2)自己負担額は?
(2の4の3)視覚障がい者用の給付対象の日常生活用具
(3)身体障害者手帳について
(3の1)身体障害者手帳を取得することで受けることができるサービス

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(1)視覚障がい者の福祉サービスにはどのようなものがあるの?


視覚障がい者の大きな課題の一つは、「安全な外出の実現」です。
「安全な外出の実現」を支援する制度として、「同行援護制度」があります。
また、視覚障がい者が一人暮らしをする場合などは、調理や掃除、洗濯などの家事についても大きな課題の一つです。
この家事を支援する制度として「家事援助サービス」があります。
この他にも、視覚障がい者に便利な用具の購入費用を一部負担していただける日常生活用具給付事業や、
様々な相談に応じてもらえる「相談支援事業」、障害者手帳を取得することで受けられる各種サービスの減免や割引などがあります。
インターネットでいろいろと調べることができる時代ですが、逆に情報が多すぎて分からないことだらけという方も多いと思います。
困ったときは自治体の福祉担当の窓口や、相談支援事業所に相談してみると良いと思います。
それでは、各制度を詳しく見ていきたいと思います。

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(2)視覚障がい者を対象とした主な福祉サービス


ここからは具体的にどのような福祉サービスがあるか解説していきたいと思います。

(2の1)同行援護サービス


同行援護サービスとは、視覚障がいによって移動に困難がある人に対し、外出時に同行援護従事者(ガイドヘルパーのことです。以下、なじみの深い「ガイドヘルパー」で解説します)が同行するサービスです。
ガイドヘルパーは、安全に移動できるようにサポートしてくれるほか、情報の提供、代筆、代読、食事の介助などをサポートしてくれます。

(2の1の1)同行援護サービスの利用対象者は?


@視覚障がいによって移動に困難を有する障がい者及び障がい児であって、
A同行援護アセスメント調査票において、移動障がいの欄に係る点数が1点以上であり、
Bかつ、移動障がい以外の欄の「視覚障害」、「視野障がい」、「夜盲」に係る点数のいずれかが1点以上である方です。
なお、身体介護を伴わない場合は、障害支援区分の判定は必要ありません。
身体介護を伴う場合は、障害支援区分が区分2以上で、障害支援区分の認定調査で定められた項目のいずれかに当てはまる必要があります。

(2の1の2)「どのようなことに利用できるの?」


厚生労働省は、以下のように同行援護サービスの内容を明示しています。
@ 移動時及びそれに伴う外出先において必要な視覚的情報の支援(代筆・代読を含む。)
A 移動時及びそれに伴う外出先において必要な移動の援護
B 排泄・食事等の介護その他外出する際に必要となる援助
具体的に挙げますと、買い物や通院、行事への参加、趣味の教室、映画鑑賞、カラオケ、スポーツ、お墓参り、選挙の投票などに利用できます。

(2の1の3)目的によっては利用できない場合があります


・ギャンブルのように、社会的モラルに反することには利用できません。
・原則として、通勤や通学、営業活動等の経済活動、頻繁な会議など、通年かつ長期にわたる外出は利用できません。
ただし、通勤に関しては「重度障害者等就労支援特別事業」によって、同行援護と同等のサービスの提供が可能となりました。
しかし、事業の実施は自治体の任意となっていますので、全国的に実施している自治体は少ないのが現状です。
また、通学に関しても、家族がどうしても支援できない時限定といった感じで、条件によっては利用できる場合もあります。
・この他にも、特定の宗教の布教活動や、特定の政党を支持する政治活動には利用できません。
ただし、お墓参りや礼拝への参加、選挙演説の傍聴、選挙の投票には利用可能です。

(2の1の4)同行援護サービス利用までの流れ


@まずはお住まいの自治体の福祉担当の窓口に相談しましょう。
A同行援護サービスの利用申請をします。
B認定調査員の訪問による認定調査が行われます。
C認定調査に基づいて審査が行われます。
Dサービス等利用計画案を作成して福祉担当窓口に提出します。
※ご本人様、ご家族様等でも作成することはできますが、一般的には指定相談支援事業所の相談支援専門員に作成してもらいます。
手続等がよくわからない時は、利用申請の段階から相談支援専門員にお願いすると良いと思います。
E審査会の意見、サービス等利用計画案等の内容を踏まえて支給が決定されます。
F受給者証が交付されます。
受給者証交付まで最大2か月ほどかかります。
G同行援護サービスを提供している事業所と契約を結びます。
※なるべくご本人様の希望に対応してもらえる事業所を選ぶと良いと思います。
複数の事業所と契約することができますので、色々な事業所の話を聞いてみると良いでしょう。

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(2の2)福祉有償運送サービス


福祉有償運送サービスとは、障がい者や要介護者等を対象に、NPO等の非営利法人や市町村が行う個別輸送サービスです。
都会のように電車やバスなどの公共交通機関が整備されていない地域では、福祉有償運送サービスは大きな支援の一つになっています。
料金は事業所によって異なりますが、だいぶ低価格となっており、経済的に大きな支援となっています。

(2の2の1)福祉有償運送サービスの利用対象者は?


@他人の介助によらずに移動することが困難であると認められ、かつ、単独でタクシーその他の公共交通機関を利用することが困難な方
A宮崎市は原則障害者手帳1級または2級を所持している方
B市町村に福祉有償運送サービス利用者として名簿に登録されている方。

(2の2の2)何故同行援護サービスと福祉有償運送サービスが一緒に利用できるの?


同行援護サービスと福祉有償運送サービスは別のサービスとなりますが、一緒のサービスのような感覚で利用できるのには根拠があります。
福祉有償運送サービスは、障害者総合支援法に基づく居宅介護等と連続して一体的に実施する運送が認められており、この「居宅介護等」に同行援護サービスが含まれているからです。

(2の2の3)利用上の主なルール


@運送の区域は、原則、運営協議会を管轄する市町村のうち協議により定められた区域となります。
行き先等の制限は事業所によって違いますが、乗車する場所又は降車する場所のいずれかが登録している区域内であることが必要です。
A原則は運転者であるガイドヘルパー1名に利用者1名の個別輸送です。ご家族や知人等が同乗することはできません。
ただし、ご夫婦ともに福祉有償運送利用者の名簿に登録されている場合は、それぞれのガイドヘルパーとともに同乗することは認められています。

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(2の3)家事援助サービス


障がい者が受けられる福祉サービスに「居宅介護」というサービスがあり、その中に家事援助サービスがあります。
「介護」と付いていますが、居宅介護は障害福祉サービスです。高齢者が受けられる介護保険サービスとは別になります。
家事援助サービスは介護保険サービスにもありますが、障害福祉と介護保険の両方に同じようなサービスがある場合、介護保険が優先されます。
したがって、家事援助サービスの場合、65歳以上の方は介護保険サービスで受けることとなります。

(2の3の1)家事援助サービスの利用対象者は?


家事援助サービスを受けられる対象となるのは、利用者本人が一人暮らしをしている。あるいは同居する家族も高齢または障害・疾病があり本人のサポートが困難であると判断された人が家事援助のサービスを受けられる対象となります。

(2の3の2)家事援助サービスの内容


@調理
利用者本人が食べられる分だけ調理をします。あくまで利用者本人を対象としたサービスであるため、ご家族等の分は調理することはできません。
A掃除
利用者が使っているスペースや場所が掃除の対象となっており、リビングやキッチン、寝室、トイレ、お風呂場、玄関などが対象です。
日常生活の範囲を超える掃除はできないこととされており、庭の草むしりやペットの世話、窓ガラスの拭き掃除、エアコンの掃除などはできないことになっています。
B洗濯
洗濯機に汚れた衣類等を投入し、洗って干したり、干して乾いた洗濯物を畳んでしまうのが基本です。
C買い物代行
買い物の対象は利用者本人の食料品や必要な日用品に限られており、趣味に関するものや嗜好品、家族のものは対象外となります。
この他に、厚生労働省の通知により、以下のサービスも家事援助サービスに含まれるとしています。
・回覧板や郵便物等の代読
・書類や手紙、アンケート等の代筆
・買い物の同行など

(2の3の3)家事援助サービスを利用するまでの流れ


利用するまでの流れは同行援護サービスとほとんど同じです。
@まずはお住まいの自治体の福祉担当の窓口に相談しましょう。
A家事援助サービスの利用申請をします。
B認定調査員の訪問による認定調査が行われます。
C認定調査に基づいて審査が行われます。
Dサービス等利用計画案を作成して福祉担当窓口に提出します。
※ご本人様、ご家族様等でも作成することはできますが、一般的には指定相談支援事業所の相談支援専門員に作成してもらいます。
手続等がよくわからない時は、利用申請の段階から相談支援専門員にお願いすると良いでしょう。
E審査会の意見、サービス等利用計画案等の内容を踏まえて支給が決定されます。
F受給者証が交付されます。
受給者証交付まで最大2か月ほどかかります。
G家事援助サービスを提供している事業所と契約を結びます。

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(2の4)日常生活用具給付事業


日常生活用具給付事業とは、重度の障がい者・重度の障がい児の方に、日常生活の便宜やその福祉の向上を図るために日常生活用具を給付する事業です。

(2の4の1)日常生活用具給付事業の対象者は?


申請する自治体に住所を有し、身体障がい者手帳、療育手帳、精神保健福祉手帳のいずれかを所持しているか、難病等の方で、障がい部位程度が給付の種目ごとの規定にあてはまるかたが対象となります。

(2の4の2)自己負担額は?


原則は自治体の定める基準金額の1割です。ただし、基準金額を超える場合、超えた部分は自己負担となります。
基準金額とは、耐用年数の範囲内で助成を受けられる上限金額です。
例えば、情報通信支援用具として、8万円の視覚障がい者用の支援ソフトを購入したとします。
この場合は1割の8000円が自己負担となります。
続いて、耐用年数の6年が経過する前に、情報通信支援用具に当たる別の3万円の視覚障がい者用支援ソフトを購入するとします。
情報通信支援用具の基準金額は10万円となっていますが、8万円+3万円ですと11万円となってしまいます。
3万円のうち、2万円の部分は1割の2000円が自己負担となりますが、基準金額を超えた1万円の部分は全額自己負担となります。

(2の4の3)視覚障がい者用の給付対象の日常生活用具


自治体によって異なりますが、以下のような用具が給付対象となっています。
なお、耐用年数と基準金額は宮崎市のデータを掲載しています。
・音声式体温計
・音声式血圧計
・音声式体重計
・視覚障がい者用ポータブルレコーダー
・視覚障がい者用 活字文書読上げ装置
※これは、文字情報等を読み取り、音声出力する機能を有するものです。
・情報通信支援用具(耐用年数6年、基準金額は10万円)
※これは、視覚障がい者向けのパソコンの周辺機器や、アプリケーションソフトで、パソコン本体は対象外です。
・点字ディスプレイ(耐用年数6年、基準金額は289000円)
※これは、文字等のコンピュータの画面情報を点字等により示すことのできるものです。
点字器
※価格は「点筆(てんぴつ)」を含むものとなります。
・点字タイプライター(耐用年数5年、基準金額は63100円
・拡大読書器(耐用年数8年、基準金額は198000円
※装置により印刷物等を、簡単に拡大しモニターに映し出せるもので、音声読み上げ機能が付くものを含みます。。
・暗所視支援眼鏡(耐用年数8年、基準金額は395000円)
※主に夜盲症、視野狭窄症状に対しての機能を有しており、暗所映像を鮮やかにしたり、広角に表示する機能等により、これらの症状への対応を行うもの。
ただし、原則、学齢期以上で、当該装置により日常生活における行動範囲及び社会参加の機会が拡大すると医師意見書により認められる者とされています。
・音声時計
・触読時計などがあります。
詳しくは福祉担当の窓口にお問い合わせください。

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(3)身体障害者手帳について


身体障害者手帳とは、身体障害者福祉法の規定に基づき、障がいのある人に交付される手帳で、視覚障がいも対象となっています。
障害者手帳の等級によって、受けられる障害福祉サービスの支援内容は異なります。
詳しい内容については、各自治体のホームページや窓口にてご確認ください。

(3の1)身体障害者手帳を取得することで受けることができるサービス


@医療費の助成


重度心身障がい者医療費助成や自立支援医療などが対象となります。

A公共料金の減免・割引


以下のような減免・割引が受けられます。
・NHKの受信料の減免
・上下水道料の割引
・鉄道運賃の割引
・航空運賃の割引
・バスの運賃の割引
・タクシー運賃の割引
・有料道路通行料金の割引
※制度の見直しにより、令和5年3月27日からレンタカーやタクシー、知人の車なども割引の対象となりました。
自家用車以外の車を利用する場合、以前の自家用車の登録の有無にかかわらず、事前に割引の申請・登録が必要となります。
なお、有効期間は申請日から2回目の誕生日までとなります。)
詳しくは自治体の福祉の窓口にご確認ください。
・公共施設の入場料等の減免
・携帯電話料金の割引など

B補装具・日常生活用具の助成


補装具・・日常生活用具の購入の助成が受けられます。
原則は自治体の定める基準金額の1割です。ただし、基準金額を超える場合、超えた部分は自己負担となります。
また、それぞれに耐用年数が設定されており、新たに制度を利用して購入する際は、耐用年数を経過する必要があります。
※身体者障害者手帳を所持している方又は指定の難病の方が対象です。
視覚障がい者の補装具の一例
白杖や義眼、矯正眼鏡、弱視眼鏡、焦点調整式の単眼鏡、遮光眼鏡などがあります。
日常生活用具については2の4で解説していますので、そちらをご参照ください。2の4へジャンプ

C各種税金の優遇措置


・所得税・住民税の障がい者控除があります。
また、・相続税や贈与税の優遇措置が受けられます。

D障碍者雇用枠の利用


身体障害者手帳を所持していますと、障がい者雇用枠に応募することができます。
なお、障害者雇用枠制度を利用できるのは、障害者手帳を所持している者に限定されています。

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